本文へ移動

Case

解決事例

公正証書で合意したものの,任意に支払いを受けられなかった債権について,強制執行まですることなく支払いを受けられた事例

事業承継・M&A

執行認諾文言付きの公正証書を作成していても、相手方が約束どおりに支払わないケースは少なくありません。本件は、支払いが止まった分割金について、強制執行の申立てまで進めることなく、交渉によって全額の支払いを受けることができた事例です。

ご相談者:卸売業を営む中小企業(債権者)
相手方:取引先の株式会社(債務者)
債権の内容:売掛金 約600万円(公正証書により月50万円の分割払いを合意)
解決までの期間:ご相談から約2か月
結果:残債権全額の回収(強制執行の申立てなし)

事案の概要

ご相談者は、長年の取引先に対して約600万円の売掛金を有していましたが、取引先の資金繰り悪化により支払いが滞ったため、当事者間の話し合いで「月50万円ずつの分割払い」を合意し、執行認諾文言付きの公正証書を作成していました。

ところが、3回目の支払いを最後に入金が止まり、電話やメールで催促をしても「今月は難しい」「来月まとめて払う」といった回答が繰り返されるだけで、支払いが再開されないまま数か月が経過していました。

ご相談者は当初、「公正証書があるのだから、すぐに強制執行すればよいのでは」とお考えでした。

しかし、強制執行を行うには、相手方のどの財産(預金口座・売掛債権・不動産など)を差し押さえるかを債権者側で特定する必要があります。また、取引関係が完全に破綻することへのためらいや、差押えが空振りに終わった場合の費用負担への不安もあり、対応を決めかねて当事務所にご相談いただきました。

当事務所の対応

①期限の利益喪失の通知と支払いの催告

まず、公正証書の条項を確認したところ、分割金の支払いを2回以上怠った場合には期限の利益を失い、残額を一括で支払う義務が生じる旨の定めがありました。

②財産調査と強制執行の準備

通知と並行して、強制執行を現実に行える状態を整えました。

・取引金融機関の把握(過去の振込履歴等からの特定)
・主要な販売先に対する売掛債権の存在の確認
・第三者からの情報取得手続(民事執行法)の利用準備

「いつでも差し押さえられる」という状態を作った上で交渉に臨むことが、本件の方針の柱です。

③代理人間の交渉

相手方にも代理人弁護士が就き、交渉が始まりました。当方は、差押えの対象となり得る財産を具体的に把握していることを示しつつ、「取引先や金融機関に差押えの事実が知られることは、貴社の信用にとって大きな損失になる」ことを指摘しました。

その結果、相手方から「差押えを避けたい」との意向が示され、支払条件の再協議に応じることになりました。

解決結果

最終的に、相手方が金融機関からの借換えによって資金を確保し、残債権全額と遅延損害金の一部をあわせた金額を、合意成立から1か月以内に一括で支払う内容で合意が成立しました。ご相談から約2か月で、強制執行の申立てを行うことなく全額の回収に至っています。

弁護士のコメント

公正証書は「作って終わり」ではありません

執行認諾文言付きの公正証書は、裁判をせずに強制執行ができる強力な書面です。もっとも、実際に回収につなげるには、相手方の財産の特定や差押えの手続が必要であり、ここで手が止まってしまう債権者の方が非常に多いのが実情です。

※本事例は、守秘義務に配慮し、事案の本質を変えない範囲で内容を変更しています。